東京都にはチャレンジスクール、エンカレッジスクールという支援教育を行う普通高校があります。
このページではそれぞれの特徴を述べていきます。
チャレンジスクール
チャレンジスクールは主に小中学校時代に不登校経験を持つ生徒や長期欠席等が原因で高校を中途退学した者などを支援する定時制の普通高校で、発達障害(LD・ADHD・自閉スペクトラム症)・グレーゾーンの受け入れも可能です。
午前部、昼間部、夜間部の3部制(定時制)で、起立性調節障害や睡眠障害によって朝起きられない生徒にとっても選択しやすい仕組みとなっています。
また、学校ごとに多様な選択科目を設けた単位制の総合学科高校です。
高校入試の特徴
チャレンジスクールの高校入試の特徴は、小中学校での不登校や高等学校での中途退学を主な対象としているため、入試において内申書の提出が不要なことです。
また、学力検査も課されません。
代わりに意欲を計る目的で、志願申告書、小論文(作文)、面接で考査を行います。
カリキュラムの特徴
チャレンジスクールも普通高校になるため、卒業には74単位の修得が必要です。
定時制なので通常は卒業までに4年間が必要となりますが、所属している部以外の授業を受けるなどによって単位を多く履修すれば、3年で卒業することも可能です。(入学後の留年はなく、最長6年間まで在籍することが可能)
特色あるカリキュラムの総合学科となっており、国数英の主要科目に関しては、生徒の学習レベルに合わせた少人数習熟度別指導を行っています。
また、20単位までは漢字検定や英語検定、歴史能力検定、TOEICなどの技能検定に合格することや、ボランティア活動などで修得できるほか、高等学校卒業程度認定試験の活用も可能です。
スクールカウンセラー、臨床発達心理士、ユースソーシャルワーカーなどによる支援があるため、発達障害(LD・ADHD・自閉スペクトラム症)・グレーゾーンや不登校経験者でも安心して学校生活を送ることができます。
それぞれのチャレンジスクールの特徴
国語や数学などの普通科目の他に「福祉・教養系列(コミュニケーション英語、保育など)」「情報・ビジネス系列(情報処理、簿記など)」「アート・デザイン系列(彫刻、版画、デザイン検定など)」の3つの分野を学習します。
また、ボランティア活動や企業での体験学習などの課外授業もあり、それも単位に認められます。
国語や数学などの普通科目の他に「生活・福祉(手芸、被服、福祉、手話など)」「創作・表現(演劇、ダンス、CG、写真など)」「製作・技術(製図、自動車技術、ワープロなど)」の3つの分野を学習します。
また、海外留学も単位認定されます。
卒業生のうち約4割が大学・短大に進学します。
国語や数学などの普通科目の他に「情報・ビジネス(IT、プログラミング、会計、簿記など)」「伝統・文化(伝統工芸、日本画、陶芸、茶道華道など)」「生活・福祉(介護、児童福祉、点字など)」の3つの分野を、実習や体験学習を中心に学習します。
卒業生のうち約4割が大学・短大に進学します。
国語や数学などの普通科目の他に「芸術・カルチャー(演劇、和太鼓、中国語など)」「情報・マネジメント(簿記、データベースなど)」「保育・ケアサービス(美容、手話、点字)など」の3つの分野を学習します。
六本木高校は「ユネスコスクール」に加盟し、「天文」や「防災学」などユネスコが推進している「ESD(持続可能な開発のための教育)」を教育課程に導入する取り組みを行っています。
卒業生のうち約4割が大学・短大に進学します。
部活動もさかんで、柔道部やバドミントン部が全国高等学校定時制通信制体育大会で上位入賞を果たしています。
国語や数学などの普通科目の他に「情報・デザイン」「ビジネス・コミュニケーション」「人間・環境」の3つの分野を学習します。
また、学習や人間関係の問題解決力を1年間にわたって学ぶ「コーピング」という独自科目があるので、発達障害(LD・ADHD・自閉スペクトラム症)・グレーゾーンのお子さんでも安心できる環境です。
インターンシップ、検定対策講座、ボランティア活動、社会体験実習などの体験活動も単位として認定されます。
卒業生のうち約3割が大学・短大に進学します。
チャレンジスクールではありませんが、不登校を経験した生徒を対象とした「チャレンジ枠」を設けています。
2022年入試倍率
学校名 | 定員 | 応募者 | 倍率 |
東京都立桐ヶ丘高校 | 170 | 155 | 0.91 |
東京都立世田谷泉高校 | 170 | 225 | 1.32 |
東京都立大江戸高校 | 170 | 217 | 1.28 |
東京都立六本木高校 | 170 | 275 | 1.62 |
東京都立稔ヶ丘高校 | 230 | 289 | 1.26 |
東京都立八王子拓真高校(チャレンジ枠) | 60 | 91 | 1.52 |
エンカレッジスクール
エンカレッジスクールは「やる気を育て、頑張りを励まし、応援する」というコンセプトの学校で、主に発達障害(LD・ADHD・自閉スペクトラム症)・グレーゾーンなどによって小中学校で十分能力を発揮できなかった生徒を支援する全日制・学年制の普通高校です。
社会生活を送る上で必要な基礎的・基本的学力を身に付けることを目的としています。
高校入試の特徴
対象者が「小中学校で十分能力を発揮できなかった生徒」なので高校入試の際に学力判定の試験はありません。
調査書(内申点)、面接(自己PRスピーチを含む)、小論文(作文)もしくは実技(工業高校)で考査を行います。
カリキュラムの特徴
エンカレッジスクールのカリキュラムは「少人数制・習熟度別授業」で基礎から学ぶことが可能ですので、学力に遅れがある生徒も安心できる環境です。
また「主要科目の30分授業」によって、集中して学習できる仕組みになっています。
進路指導や生活指導については「1クラス2人担任制」によってきめ細かな支援体制となっています。
また、「キャリアガイダンス」も充実しており、ジョブサポーターやユースソーシャルワーカーなどの外部人材を活用することができます。
一般的な普通高校との違いとしては、中間・期末テストなどの「定期試験がない」という特徴もあります。(東村山高校を除く)
ただし、卒業には74単位の修得が必要なので、遅刻や欠席が多ければ進級や卒業は難しくなります。
それぞれのエンカレッジスクールの特徴
福祉や保育等の就業体験や、情報処理検定・食物検定・被服検定等の資格取得に力を入れている学校です。
部活動が盛んで、陸上競技部が都大会で好成績を残しています。
和太鼓部や吹奏楽部などは地域行事、保育園や高齢者福祉施設等で活躍しています。
就職志向が強く、卒業生のうち大学・短大への進学率は1割未満です。
自己管理能力の定着に力を入れており、独自の「セルフマネジメント」という授業があります。
実験設備やICT機器が充実していることも特徴の一つです。
インターンシップを中心とした就労支援体制が充実しており、2014年には「キャリア教育優良学校」として文部科学大臣賞を受賞しています。
さらに厚生労働省が支援する地域若者サポートステーションと連携しており、卒業時点で進路や進学が決まらない生徒に対するフォローも行っています。
就職志向が強く、卒業生のうち大学・短大への進学率は1〜2割です。
工業高校なので、3年生から「機械加工技術系列」「オートメカニック技術系列」「設備技術系列」「デザイン・DTP技術系列」「インテリア技術系列」「コンピュータ技術系列」の6系列から将来の職業を意識して選択した系列で学び、専門性を身につけることができる学校です。
入試の際にも小論文の代わりに読み取り作図や工作などの実技試験が課されます。
就職志向が強く、卒業生のうち大学・短大への進学率は1割未満です。
スピードミントンなどの生涯スポーツ、茶道や和太鼓などの伝統文化、農業・園芸、手話などの福祉ボランティア等、特色のある様々な体験授業に力を入れている学校です。
また、校内にはWi-Fi環境が完備しており、ICT機器を活用した学習支援も行っています。
規律を重視している校風のため、頭髪や服装指導が厳しいです。
大田区や蒲田警察と連携し、清掃ボランティアなど地域に根ざした活動も行っているという特徴もあります。
エンカレッジスクールの中では比較的進学志向が強く、卒業生のうち約2割が大学・短大への進学します。
エンカレッジスクールの中では唯一進学に力を入れており、一般受験で大学合格を目指す「特別進学クラス」を設け、また他のエンカレッジスクールには無い定期試験が行われる学校です。
学習以外ではスポーツ・文化・音楽・美術など15種類の中から興味のある体験授業を選択することができます。
また、校内にはWi-Fi環境が完備しており、ICT機器を活用した学習支援も行っています。
エンカレッジスクールの中では最も進学志向が強く、卒業生のうち約2〜3割が大学・短大へ進学します。
工業高校なので、2年生から「機械類型」「食品工業類型」「工業化学類型」の3類型から将来の職業を意識して選択した類型で学び、専門性を身につけることができる学校です。
様々な資格取得のための講座や会社見学、インターンシップなども積極的に行っており、就職内定率は100%を誇ります。
部活動や生徒会を通して地元の地域イベントへの参加を行うなど、地域と連携・密着した活動を行なっています。
就職志向が強く、卒業生のうち大学・短大への進学率は1割未満です。
2022年入試倍率
学校名 | 定員 | 応募者 | 倍率 |
東京都立足立東高校 | 124 | 132 | 1.06 |
東京都立秋留台高校 | 137 | 165 | 1.20 |
東京都立練馬工業高校 | 88 | 104 | 1.18 |
東京都立蒲田高校 | 87 | 96 | 1.10 |
東京都立東村山高校 | 118 | 153 | 1.29 |
東京都立中野工業高校 | 72 | 39 | 0.54 |