インクルーシブ教育と分離教育
2011年8月に「障害者基本法」が改正され、同法16条にて「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない」と、インクルーシブ教育を推進することが法律上で明示されました。
また、障害者の権利の実現のための措置等を規定した国際条約「障害者権利条約」についても、日本は2014年に批准しました。
そして同条約について2022年8月、国連・障害者権利委員会による日本政府への審査が実施されました。
日本のインクルーシブ教育の実態は
審査の結果、教育の分野で様々な問題が指摘されました。
以下は主な指摘内容です。
- 障害のある子どもの分離教育が存続している。
- 障害のある子どもの普通学校への入学拒否および特別支援学級の子どもの普通学級への参加制限。
- 障害のある子どもに対する合理的配慮が不十分。
- 教師のスキル不足とインクルーシブ教育に対する否定的な態度。
- 高等教育における障害のある子どもの障壁に対処する国の包括的な政策の欠如。
分離教育とは
これらの指摘事項の中でも、最も問題なのは「分離教育の存続」です。
分離教育は障害がある子どもと、障害がない子どもを分離して教育を行うことであり、文部科学省が現在行っている「普通学級」と「特別支援学級」を分けて教育を行う体制は分離教育の典型です。
障害がある子どもが障害がない子どもと共に教育を受けられるインクルーシブ教育とは真逆の概念です。
残念な事実として、普通学級に在籍しながら支援を受けたいと考えている保護者に「特別支援学級へ在籍を移さないと支援教育を受けられない」と望まぬ転籍を勧める学校や教師が数多く存在します。
そしてその理由の多くは「教師自らのスキル不足」「組織としてのノウハウ不足」です。
まさに国連・障害者権利委員会の指摘の通り、発達支援において分離教育が蔓延っているのは事実であり、私たちも非常に問題があると考えております。
東京都の「特別支援教室」の試み
東京都では、普通学級に在籍しながら週数回程度、在籍する学校で特別支援教育を受ける「特別支援教室」を実施しています。
通級教室と違って、担当教員が巡回指導するため在籍校で指導を受けることができ、子どもが別の学校の通級教室に通う(他校通級)こともあった通級教室の問題点を解消した仕組みとなっています。
このように普通学級に在籍することを前提に支援体制を拡充していくことがインクルーシブ教育の基本だと私たちも考えます。
まとめ
もちろん、いかに優れた仕組みを作ったとしても、それを実行する人材が育っていなければ、絵に描いた餅です。
私たちは世界水準の専門的知見をもって、発達凸凹(発達障害・グレーゾーン)・ギフテッドの特性に合わせたアコモデーションを行うことができます。
民間の力で、インクルーシブ教育を推進する一翼を担えるように活動しています。